前々回と前回で、AIに100%の正解を求めてはいけない、言い換えれば「AIを信じすぎるな」というお話をしました。それに続いて今回は、AIとチャットする上で重要な注意事項について説明します。
ちなみに、文字(テキスト)でAIとやりとりすることを、以降は「チャット」と呼びます。専門用語というほどのものではないのですが、こちらとしても、その方が話を進めやすいので。AIと話す事を「AIとチャットする」なんて言い方をします。
個人情報の扱い
さて、そのチャットをする上で大切なことなのですが、「個人情報・顧客情報・機密情報・ID・パスワード・口座情報など」は、原則として入力しないようにしてください。仕事でAIを使うような場合であれば、社内の未公開資料なども同様に入力することは避けるべきです。
なぜなら、入力した文章やアップロードしたファイルは、回答を生成するために事業者側(例えばChatGPTであればOpenAI、GeminiであればGoogle)のシステムへ送信され、そこで処理されることになるからです。
とはいえ、これは、入力した個人情報がネット上で公開されるという意味では全くありません。ただ、自分の管理下を離れて、第三者であるAI事業者のシステムへ送信されるから慎重に扱う必要があるということです。
オプトアウト
さて、AIに入力した情報が、AIサービスを提供している事業者のサーバーに送られているという事実を前提にして、その辺りの仕組みについて、少し見てみましょう。
AIに入力され、サーバーに送られた情報は、原則として生成AIが私たちへの回答を生成するために使われます。ただし、ここで注意して欲しいのは、それらの情報がサービス改善やAIの学習に使われる場合があることです。ユーザーの入力した情報がAIに学ばれるということですから、学んだAIを通じて第三者に開示される危険が生じるわけです。
そこで、「オプトアウト」という仕組みがあります。「オプトアウト」とは、簡単にいえば、「自分の情報を、その目的には使わないでください」と利用者側から拒否することです。生成AIでは、入力した内容をAIの性能向上などに利用する設定になっている場合があります。その利用を希望しない場合に、設定を変更して拒否する仕組みが「オプトアウト」です。
オプトアウトのやり方
ここでは代表例として、ChatGPTのWeb版で説明します。
ChatGPTでは、「設定」→「データコントロール」から「チャットをモデルの学習に使用するかどうかを設定」という項目をオフにすると、その後の会話内容がモデルの学習に使われなくなります。
この設定はアカウント全体に反映されるため、スマートフォンのアプリなどでも改めて設定する必要はありません。スマホアプリからオプトアウトをしようというのであれば、サイドメニュー → プロフィール → データコントロールから同じ設定ができます。もちろん、アカウント全体に反映されるのはWebから操作した場合と同様です。なお、画面の表示や設定項目の名称は、今後のアップデートによって変更されることがあります。この記事では、執筆時点の画面をもとに説明しています。
他の生成AIでも、オプトアウトの考え方や設定方法に大きな違いはありません。ChatGPTでは前述のとおり「データコントロール」から、Claudeでは「プライバシー設定(Privacy Settings)」、Geminiでは「アクティビティ」からオプトアウトすることができます。分からない場合は、そのAI自身に「入力した内容をAIの学習に使わないようにするには、どう設定すればよいですか」と尋ねてみるのもよいでしょう。
そして、ひと口に「オプトアウト」といっても、その扱いや設定方法はサービスや料金プランによって少しずつ異なります。気になる方は、利用しているAIサービスの公式ヘルプやプライバシーに関する案内も確認してみてください。
かつてクラウドサービスでも…
さて、オプトアウトによって、ユーザーが入力した情報がAIの学習などに使用されることがないとしても、やはり、自分の書いたものや情報が第三者のサーバーに送信されることに不安を覚える方もおられるかもしれません。
しかし、同様のことは、かつて「クラウドサービス」でもありました。クラウドサービスとは、ゲームなども含めてインターネット上で提供されるさまざまなサービス全般を指します。特にその中でも「Google Drive」やアップルの「iCloud」などに代表される「クラウドストレージ」や「オンラインストレージ」と呼ばれるサービスは、他社のサーバーに自分のデータを保存するのですから、データを他人のサーバーに預けるのは不安だよね、とはよく言われたものでした。
しかし、今では、個人、企業を問わず多くの人、政府までもがこうしたクラウドサービスを利用しています。自分のアカウントをしっかり管理している限り、他人に覗き見されたり、外部に漏れたりすることはほぼありませんでしたから。その実績が安心感となって利用者を増やしていったのでしょう。
これと同様に、今では、AIサービスも多くの人に利用されています。それは、ユーザー情報の漏洩がほぼないと思われているからでしょう。とはいえ、AIに入力したことが、当該AIサービスを提供している企業のサーバーに送信されているのは間違いありませんので、「個人情報・顧客情報・機密情報・ID・パスワード・口座情報など」、いわゆるクリティカルな個人情報を入力するのは慎重であるべきです。基本的には入力することは避けるべきと言えます。
この辺りの事情は「ハガキに何を書くか」に似ています。ハガキの場合、配達途中にその内容が誰かの目に触れる可能性は否定できません。仮に見られても大丈夫なものだったら…というのが1つの基準になるのではないでしょうか。ハガキを使う人が激減している現状ではありますが。
さて、これで、AIサービスを使い始めるにあたって、最低限必要なことは概ねお話しできたかと思います。「習うより慣れろ」を実践してみてください。
次回からは、より実践的な話をしていきたいと思います。
(コラムAI編第5回 終わり)