生成AIとは
さて、前回の第5回の「AIに何でも話していいわけではない」で、生成AIとチャット(テキスト文字によるやり取り)をする準備は整いました。いよいよ、AIに何か話しかけてみましょう。
ところで、このコラムでは、生成AIのことを単にAIと呼んできました。世の中には生成AI以外のAIもありますが、我々が現在話題にしているAIは、生成AIです。では、いったい何を「生成(generative)」するのでしょうか。文章や絵、プログラムコード等です。このうち、私たちが日常的に生成してもらってるのは、日本語の文章による問い掛けに対する回答、ですね。
というわけで、どんな回答を生成してくれるのか、これから確かめようという訳です。
と言われても、何を話したらいいのか解らないという向きもあるかもしれません。そこで、今回は少し肩の力を抜いて、AIとのチャットのコツみたいなものを紹介します。
為替相場について質問してみよう
まずは、比較的役に立ちそうなチャットから。
日頃、ニュースに接して、解らない用語や概念が、誰にも少しはあるはず。そういったことを訊ねてみるのもよいかと。
特に金融や経済に関する問題、例えば為替相場について「1ドルが○○円と為替相場が報道されるけど、なぜ○○円の金額が大きくなるほど、円安なの?釈然としないのだけど?」と訊ねてみたりすると、なかなか親切に教えてくれる。
万が一、それでも解り難いときは、見栄を張らず「もう少しわかりやすく、中学生にも解るように解説してくれ」と言えば、より簡単な説明をしてくれる。AIに見栄を張る意味はないので素直にこう言えるのは、実にありがたい。
テレビや映画について語る
第3回で、私がAIと映画「七人の侍」について語り合ったことに触れたが、映画やテレビドラマなどについて、AIと語り合うこともできる。ただ、当然のことながらAIは、人間のように映画やテレビドラマを鑑賞しているわけではない。ネットに集積した情報・感想などを元に話を合わせているにすぎない。それでも、それと知って話すのも悪くない。時々、ちょっとしたトリビアを教えてくれることもある。ただ、そういうトリビアについて自慢げに語りだしたら、「ほんとか?」くらいのツッコミは入れた方がいい。ちゃんと根拠があれば、それなりに説明してくれる。私は、AIが言い出したトリビアは既に知っていることが多かったが、これといって誤ったことを言われた記憶はない。「ほんとか?」と問えば、「監督がインタビューでそう言ってました」とその記事のURLを教えてくれたりした。
興味深いのは、先の「七人の侍」や「風と共に去りぬ」「ゴッドファーザー」「2001年宇宙の旅」「勝手にしやがれ」といった古典的な名作映画については、比較的話がはずむということだ。
知識カットオフ
そもそもAIには、事前に教え込まれた知識に限界がある。それを「知識カットオフ」という。例えば、あるモデルは2026年2月までの知識を持ってる。別のモデルは2026年1月までとなっている。その時までの知識を事前に学習しているということである。それ以降のこと、例えば新作映画についてはネットで検索して回答する。一方、古典的名作についてはより知識の蓄積があるので、なかなか良い応答をしてくれるのだ。もっとも、「七人の侍」での志村・宮口取り違えみたいな勘違いは、たまにあるけれど。
とはいえ、実際に会話してみると、こちらに適当に調子を合わせて会話しているだけという印象を持つ人もいるだろうし、意外に鋭いことを言うなという人もいたりして、そのモデルの性能にもよるが、人によって感想は様々だろう。
PCやスマホの使い方について訊ねる
他にも、旅行プランを立ててもらうなんてのはよくあるAIの利用法だ。これは、あちこちに紹介記事があるので、そちらに譲り、私としては、PCやスマホの使い方について訊ねてみることをお薦めしたい。
これは、AIに訊ねるべきネタとしては本命の1つではないかと考えている。基本的にAIは、PCやスマホ、その他の周辺機器のハードウェア、OSやアプリ等のソフトウェアに関する知識は豊富だからだ。言い換えるなら、その種の情報はネット上にとても多いということでもある。
ただ、前記のとおり「知識カットオフ」があるため、最新の機種やバージョンについての知識がないことが多い。しかし、そうした場合はちゃんとネット上から最新情報を集めてくる。興味深いのは、AIにそのAI自身の使い方を訊ねたときだ。ほとんどの場合、即座には回答しない。公式のヘルプやドキュメント(文書)だけでなく、ネット上のユーザーによる不具合報告や解決法なども参照してから回答する。それは、そのAIのモデルがリリースされる前に学習自体は終えているからだ。
私も、Office関連ソフトの操作方法を訊ねることがよくある。Excelの関数を教えてもらうことは多い。さらに、最も活躍したのは、電子書籍の縦組製版を依頼されたときだ。若い頃に出版社勤務経験があり、尚かつ、PCにはそこそこ詳しいということから、そんなことを頼んできたのだろう。私はAIに、その目的に適したアプリ「Vivliostyle」の存在とその使い方を教えてもらい、使い慣れないCLI(Command Line Interface)─マウスではなく、キーボードでコマンドを打ち込んで操作するもの─だったが、何とか目的を果たせた。さらに、自分の事務所でのWi-Fiを使ったオフィスネットワークの構築を、初めての経験であったが、AIの助けを借りて1人で完遂した友人もいる。ただ、この種の相談をAIにする際には、自らのやりたい事と手持ちのIT環境を詳細にAIに伝える必要がある。これらの情報がなければ、AIも適切な回答をするのは困難だ。もっとも、そうしたことが分からないなら、分からないなりに工夫して訊ねれば糸口を掴むことはできるだろう。
もちろん、これらの作業それ自体は人の手で行ったのであるから、AIの助けを借りれば誰でもすぐにできるようになるとまではいえない。とはいえ、AIの助けを借りて自分の「能力を拡張」できたのは確かだ。初歩的なことから順序よくAIに教わることによって、相応のスキルを身につけていくことは可能だろう。こうした場面では、AIは良きパートナーとなる余地が十分にある。
さて、今回は、AIとのチャットについて、私の経験を交えてお伝えしてきましたが、次回は、もう少しだけ突っ込んだ話をした後に、チャットを続けていくとどうしてもぶつかるアノ問題について話をしたいと思います。
(コラムAI編第6回 終わり)